パートの秘密を探して
介護保険サービスの利用者も急増している。
高齢者ケア施設の現状をみておこう。
老人福祉法で決められているカテゴリーについてみると、二OO一年で介護老人福祉施設数は六四・三万人、介護老人保健施設(通称は老人保健施設、あるいは老健)は二七七九カ所、定員一三・四万人、在所者数は一三万人、介護療養型医療施設(通称は老人病院、ただし診療所含む)は三七九二カ所、定員二一万人、在所者数一0・九万人。
これが日本の公的補助で支えられている主な介護施設の現状である。
これらの施設の負担は基本的に定率の応益負担であり、負担が一定限度を超えると、高額介護サービス費によって負担が緩和される仕組みになっている。
本人負担には月額五万円程度の上限がある。
これに対して実際にかかっている経費(月額)は、全国の平均的な数字で特別養護老人ホームが三三万円、老人保健施設が三五万円である。
本人負担は最高五万円程度だから、実質補助率は八割から九割という高率になる。
これらの設備の整備には費用の七・五割の補助金が出る。
すなわち国が五割、都道府県が二・五割、残り二・五割が事業者負担という構造である。
このように施設整備費と運営費について多額の補助金が出ており、財政負担は極めて重い。
それでは高齢者ケアを推進するためにどのような施策が行われているのだろうか。
一九九九年から二OO四年までの五カ年計画で、高齢者福祉サービスを充実するための「ゴールドプラン」という計画がある。
ゴールド0フランには多くの項目があるが、主な項目だけをみると、例えば施設整備では特別養護老人ホ−ムを二九万人分から三六万人分に、老人保健施59設を二八万人分から三O万人分に増やすことが計画されている。
これ以外にも、グループホ−ムやケアハウス、高齢者生活福祉センターなどの生活支援系の施設がある。
グループホ−ムは、介護保険の在宅介護を延長したような考え方に立ち、九人まで収容の小規模施設で痴呆性老人の面倒をみるというものである。
グループホ−ムの経営は社会福祉法人の独占ではなく、医療法人や民間企業、NPOも経営できる。
最近、急激な伸びを示しており、非常に重要な仕組みである。
ゴールドプランは三二OOカ所を目標にしている。
ケアハウスは個室で、虚弱老人や自分のことはある程度自分でできる人たちが入所する。
利用料は個室なのでやや高く、普通五万円から一O万円ほどである。
これを一O万人分から一四OOカ所を一八OOカ所に増やす計画だ。
既存の公的介護施設の問題は、生活者からみた統一的な介護施設サービスが行われていないことである。
供給側である役所の業務分担によって施設が区分されているため、生活者としては非常にやりにくいことが起きてくる。
一番の例は、高齢者が病院に長期滞在する場合、二一カ月以上は滞在できないので病院を変わらなければならないことだ。
生活者からみたときには、そうした不都合が現状の福祉政策にはあると言わざるを得ない。
こういう介護の費用をどう負担するのかということであるが、やはり相当な費用がかかる。
二OO三年は予算ベースで五・四兆円に上っている。
高齢化が進めば当然、介護保険の支出も増えるから、個人の保険料負担も、自治体や国の負担も増加することは避けられない。
一方、日本の経済は成長鈍化で税収が伸び悩み、財政制約が年々厳しさを増している。
例えば、二OO四年度の国の一般会計予算は八二兆円だが、税収見込みはその半分しかない。
累積債務は二OO三年度末で六八六兆円程度と見込まれ、対GDP比率は一三七%に達する見込みである。
さらに今後を展望すると、高齢化に伴い社会保障費はじめ社会的経費の累憎は不可避である。
まず年金は負担する人が減り受給する人が増えていくわけだから、給付水準を守ろうとすれば負担は高まらざるを得ないし、負担額を抑えようとすれば給付は減らざるを得ない。
いずれにしても年金財政は非常に難しい段階を迎えている。
医療保険も同様である。
二O代と八O代の年間の医療経費は平均して一O倍程度違うというように、高齢化が進むと医療費負担はうなぎのぼりに増えていく構造になっている。
この章で取り上げている介護は福祉における一番大きな分野だが、人口が若ければ介護需要はほとんどないわけで、高齢化すればその費用はストレートかつ加速度的に増える。
政府はプライマリ−バランスを二O一O年頃に達成するということを基本方針として掲げている。
それが非常に厳しいことは周知だが、仮にプライマリ−バランスが達成されたとしても、累積債務累増のべースが落ちるというだけのことで、赤字が返済されるというわけではない。
このようにみてくると、旧来型の施設、つまりゴールドフランの施設整備のところで触れた特別養護老人ホ−ムや老人保健施設などの施設を増やしていくことは非常に難しいことが分かる。
ゴールドプランなど、これまでは大型で重装備の仕組みを増やしていくのが福祉増進だと理解されていたが、上記の財政制約を考えると、無駄なコストは徹底的に省かなければならず、重装備で高コストの施設の見直しは避けられない。
一方で高齢化は進むので、高齢者の社会的需要に応えるには民間施設の活用を真剣に考えなければならない。
民間施設をできるだけ増やし活用して財政資金への依存を下げ、財政資金、公的資金は本当にそれを必要としている部分に集中すべきである。
例えば身障者や支払い能力がない人に特養や老健のサービスは集中すべきであり、多少とも支払能力のある人はできるだけ民間の施設に入ってもらうことがどうしても必要になってきた。
もう一つは、利用者の観点からの介護施設サービスの見直しである。
これまで福祉というのは特養や老健が基本と考えられてきたが、果たしてそれでいいのかということである。
特養や老健は大規模な施設で一OO人ぐらいの人が入所しており、建物をつくるのにも一O億円規模の施設整備費がかかる。
装備が大規模なので介護のサービスは手厚いはずと思えるが、実は生活者の観点からみると非常に不満が多い。
入所者が多いのでサービスは流れ作業のようになりがちだし、入所者を名前ではなく番号で呼ぶようなことになったりもする。
医者や看護師やヘルパーなどサービスのインフラは整っており、予算もついているが、使い勝手は必ずしも良くないというのが最近の評価である。
現在、政府は「安心ハウス」という構想を新しい仕組みとして掲げ、推進し始めている。
この安心ハウス構想は、筆者が内閣府特命顧問として二OO一年秋に小泉首相に提案したものである。
小泉首相は強い関心を示し、特命顧問の提案に従って実現するようにと関係当局に指示された。
その結果、同年九月の改革工程表に盛り込むことができた。
改革工程表は同年六月に発表された第一次骨太改革プランを精織化したものである。
全体で五OO本ぐらいの政策が掲げられているが、その一つとして安心ハウス構想が取り上げられた。
工程表には「官民資産を活用し、利用者負担を原則とする中所得向け『安心ハウス構想』(高齢者用施設で質の高いケアサービスを受けられる)を民間主体の多様なビジネスモデル(老人デイケアサービス併設型、公営住宅型、高齢者向け有料賃貸住宅活用型、民有地活用型)で構築(一三年度中)、普及をはかる(一四年度中)」という文章が書き込まれている。
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